沖縄県久米島や米国ハワイで実証実験が進hでいる海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion,以下OTEC)は,発電のみならず,そこで使用する海水を海水淡水化や深層水の冷熱利用などに複合利用が行えるのが特徴である.その中で,OTECと海水淡水化の複合利用については古くから研究が進められており,「スプレーフラッシュ蒸発式海水淡水化法」との組み合わせが最適であることが明らかになっている.同方式は,主に海水を真空下でフラッシュ蒸発させるフラッシュ蒸発器,その蒸気を深層水で凝縮させる凝縮器,系内を真空状態に保つための真空ポンプで構成されており,真空ポンプの動力のみを必要とするため,低コストで運転できることもOTECとの複合利用の利点となっている.本方式による海水淡水化プラントはインドの小島で実証実験を兼ねて運用されている.また,佐賀大学では2014年から前出の久米島のOTECの海水を利用した海水淡水化の複合利用による実証実験も進めてきている.ところで,本海水淡水化法については,これまでフラッシュ蒸発器の性能向上を目指した研究として,フラッシュ蒸発器の中に配するノズルの形状,配置,噴流の分布が造水量に与える影響について求められてきた.一方,凝縮器についての研究はほとhど行われていない.本方式で用いられる凝縮器は,コンパクトで性能の良いプレート式熱交換器が主流であり,その技術はOTECの凝縮器の技術と共有されている.OTECでは海水とアンモニアを媒体として熱交換器に流して使用するため,海水の腐食に対する対策が取られている.特に材質は腐食のないように伝熱面にチタニウムを一般に用いる.一方,海水淡水化の凝縮器は,冷却水として海洋深層水,作動流体として若干の海水を含む水蒸気を流すため,海水による腐食の対策はOTEC同様に必要である.よって,腐食による影響のない材質の選択は熱交換を設計する上で重要な課題である.一方,同海水淡水化法では製造コストと造水コストを下げることが普及における課題の一つとなっている.そこで,プレート式凝縮器の製造コスト減を考える際にコストの安い伝熱面の材質を選択も考える必要がある.しかし,前述のように,伝熱面は海水腐食対策が必要とされるため,材資質の選択の幅は狭い.チタニウムが現在最適な材料として用いられているが,熱伝導率が他の熱交換器材料に比べて低いことと,単価が高いことから,伝熱性能及び製造コストに大きな影響を与えている.そこで,筆者らは熱伝導率の高くコストの安いアルミニウムの使用に注目して熱交換器の伝熱面材料として用いることにした.ところで,アルミニウム材は合金の種類によっては海水に対する耐腐食性が劣ることが知られており,また,アンモニアに対しても腐食することからOTECの熱交換器材料として直接使用することも難しい.そのため,腐食対策としてアルミニウム材にコーティングを施すことでこれらの熱交換器での利用可能性を高めることを考え,PEEK樹脂およびWINKOTEでコーティングしたアルミ合金板を用いて海水及びアンモニアを使った熱交換実験を行うことで,耐腐食性について検証を行った.その結果,コーティングの有効性が確認できた.そのことから本アルミ合金板はフラッシュ蒸発式海水淡水化装置の凝縮器でも利用可能と考えた.そこで,同海水淡水化装置の凝縮器での利用を想定して,本アルミ合金板を凝縮器の伝熱面として使用した場合の伝熱性能を確認するため,冷却水温度,流量および蒸気温度を条件とした凝縮熱伝達率の測定を行った.また,比較のために既存のチタン製プレートの凝縮熱伝達の測定も行い,その結果にっいて報告を行う.
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