逆圧力勾配共存対流乱流境界層における壁面熱的境界条件変化の影響に関する研究

摘要

共存対流乱流境界層は熱交換機やタービン翼など工学機器の周辺でよく見られる重要で基本的な現象の一つであり，これを解明することは工学上非常に意味がある.しかし一言に共存乱流境界層と言っても，これは外力など周囲の影響を受け大きく変化する.例えば逆圧力勾配はタービン翼周辺などで生じる外力であるが，これは流れの剥離再付着の原因となる.また共存対流乱流境界層は，流体温度と壁温などの基準温度の温度差により乱れが抑制もしくは増幅されるなど，浮力の影響を強く受ける.さらにこの浮力は一定でなく，多くの場合壁温などの変化に伴い変化する.このように共存対流乱流境界層は多くの影響を受け複雑化しており，これを解明するためには，外力などの影響を深く調査する必要がある.ところで近年，コンピューターの進展に伴い直接数値シミュレーション（Direct numerical simulation: DNS)による解析が注目されており，これにより実験では困難であった壁面極近傍の乱流統計量の取得がなされ，乱流熱伝達現象への理解がますます高まってきている.その中でも乱流境界層熱伝達現象については，壁面の熱的境界条件が変化する乱流熱伝達，温度成層を伴う場合，はく離再付着を伴う場合など先ほど挙げた共存対流乱流境界層に影響する現象についても深く行われ，その特性の調査や乱流モデルの予測性能評価が行われた.また最近ではそれらの影響が複数が重畳した場合の研究が行われ，単一の影響では考えられない特異な現象が起こりえることも明らかになっている.しかしこのような知見は少なく，乱流への影響因子が複数存在する複雑な乱流熱伝達現象の特性は未だ謎が多い.そこで本研究では，逆圧力勾配を受ける共存対流乱流境界層が，熱的境界条件の変化する壁面上を通り過ぎる乱流熱伝達現象のDNSを行い，共存対流乱流境界層に対し複数の現象の重畳が与える影響の解明を行う.