札幌オリンピックの雪を白く－札幌の都市熱供給

摘要

先日，平昌オリンピックが閉幕したが，日本は冬季オリンピック史上最多となる13個のメダルラッシュに沸き，テレビの画面にくぎ付けになった方も多かったであろう.斯く言う筆者もその一人である.熱戦，名言，感動のシーンは人々の脳裏に焼き付き後世にも語り継がれていく.そして，韓国「平昌（PyeongChang)(正式には平昌郡)」というオリンピック開催地の地名も人々の記憶に残っていくだろう.このあと開幕するパラリンピックにおいても日本勢の躍進に多いに期待したいところである.オリンピックという国際的なイベントは，「スポーツシティというプレゼンスを高め，国際化に大きく貢献するとともに，その都市で暮らす市民の誇りとアイデンティティの形成につながっていくことになる.また，世界平和に貢献するというオリンピック本来の意義に加え，都市基盤やスポーツ施設の更新，バリアフリーの促進といった都市のリニューアルを推し進めることになり，地域経済の活性化とともに世界の人々へその都市の魅力をアピールする絶好の機会」となるのである.ここ札幌は，1972年にアジア初となる冬季オリンピックが開催された都市である.その軌跡を辿ると，まちのあちこちにその面影が残っており，オリンピックのシンボルである五輪のマークを目にすると，一市民としてとても誇らしい気持ちにもなる.しかしながら，その開催に至るまでは，急速に都市化が進hだ札幌の特殊性が招いた弊害と，その困難を何とか克服しようとした先人達の苦悩，そして，それを乗り越えていった人々の大変なエネルギーが注ぎ込まれている.本稿では，「人と熱との関わり」というテーマのもと，札幌での都市熱供給導入までの足跡についてご紹介させていただくとともに，最後に時代の変遷とともに変わりゆく熱供給の役割について触れていきたい.