施設園芸の電子化の進展と生産現場への普及の試み

摘要

我が国の施設園芸の特徴は、施設1 棟の面積、導入された設備の分布が、欧米をはじめとする諸先進国と比較して、極端なピラミッド構造になっていることである．研究開発分野では、1980 年代から、植物工場、植物生体情報センシング、高度環境計測制御システム、パソコン通信ネットワーク、農業エキスパートシステムなどの電子工学技術の応用研究が活発になされてきた．しかし、これらの導入・普及は進展せず、ピラミッドの頂点の数%に留まるか、廃れてしまった．昨今の半導体素子の劇的なコストパフォーマンスの向上は、コストによる導入障壁をほぼ撤廃可能にした．現在でも、十数棟のパイプハウスの窓を手動で毎日開け閉めしているような、ピラミッドのすそ野の施設園芸生産者にまで、電子化による労務・収益性の改善の恩恵をもたらすために残された課題はどのようなものか．また、それを解決するためにどのような方法が期待できるのか．これらについて、演者の専門である施設園芸環境計測制御システムを対象に論じる．