植物起源VOC を用いたクリーギー中間体の大気オゾン生成への影響評価

摘要

大気中における主要な環境汚染物質の一つとして揮発性有機化合物(VOC)が挙げられる。VOCは窒素酸化物（NOx）との光化学反応による対流圏オゾン（O_3）の生成に関与している。また、VOCは、人為起源VOC (Anthropogenic VOC; AVOC)と生物起源VOC (Biogenic VOC; BVOC)に大別できる。BVOCは全球でAVOCの10倍以上の排出量があると見積もられており、イソプレン、テルペン類など反応性の高い物質を主成分とすることから大気質への影響は大きいとされる。さらに、BVOCの多くが炭素-炭素二重結合を持っていることから、アルキルペルオキシラジカル(RO_2)生成によるO_3生成への寄与だけでなく、O_3と直接反応してクリーギー中間体(Criegee intermediate; CI)生成にも寄与していることが予想される。CIは強酸化剤であり、大気中でSO_2やNO_2などの酸化に関わっているとされる。大気中でのVOCの光化学反応の影響の評価は光化学チャンバー実験を通じて多くの先行研究で行われてきているが、複数種のVOCを用い、かつCIの生成及びCIによる酸化反応を検討した例は少ない。そこで、本研究ではイソプレン、テルピノレンの2種のBVOCを用いた光化学チャンバー実験によるO_3とNOx濃度の測定を行うとともに、ボックスモデルによる感度解析を行い、CIにかかわる反応の大気オゾン生成・消費に対する影響の評価を行うことを目的とした。