放射性物質の降下量変動

摘要

東日本大震災時に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故から9 年半が経過した。事故現場から60 ㎞北西に位置する福島大学では，事故当時から放射性物質の降下量や大気中濃度について計測を重ねてきた。現在，事故当初観測された放射性物質のうち半減期が短い~(131)I や~(134)Cs などについては検出限界未満になっているものの，~(137)Cs については数Bq/m~2month と気象研究所（2007）が事故前に計測していた量と比較して，凡そ100 倍から1000 倍になっている。渡邊ほか（2016，2017，2018，2019）は，その起源を推定するために，粒径ごとの蛍光X 線分析を行い，0.39μm 以下の最も微細な粒径の放射線強度の減衰が小さく，福島市近辺の表土成分である風化したバイオタイトの元素組成に類似していることを示した。ここでは空間的な降下量変動特性を調査し，降下量の空間分布がこれまでの分析結果と整合性を有しているかどうかを検証したので，その結果を報告する。