乳房温存療法における被ばく線量評価のための女性胸部ファントム開発

摘要

乳房温存療法とは、ステージⅡ期までの乳がhに対する標準的な局所治療であり、乳房温存手術後に放射線照射を行う治療法である。晩期有害事象として対側乳がhの発生等が報告されている[1]。本研究では、乳房温存療法における人体影響を検討するための生体モデルとして、女性胸部ファントムを開発した。本ファントムは、ICRP110人体ボクセルファントム（Adult female）[2]と同等のスケールでモデリングを行い、縦30cm,横40cm,高さ30cmの構造モデルとした（Fig.1）。熱融解積層方式（FDM）3Dプリンター Belluloにて3D造形を行い、軟部組織にはポリウレタン樹脂、骨組織にはエポキシ樹脂を使用した(Fig.2)。両側乳房・両側肺・心臓の5箇所にファーマ型検出器を挿入し、各臓器における被ばく線量の測定を可能とした。また、両肺に電動エアーポンプを接続し空気の出し入れを行うことで、呼吸の動きに対応した骨構造の形状変化や心臓の位置変化を考慮した線量評価を可能とした[3]。呼吸や心臓の動きに対応して患者の体が動く放射線治療領域における正確な線量評価を実現し、シミュレーションによる線量計算とのデータ比較等に広く用いられることが期待される。この研究の実現により、自由呼吸時と呼吸同期時での被ばく線量の違いを検討することができ、放射線治療における乳癌治療の発展に貢献することができると考える。