簡易没入型全方位VR歩行プラットフォームおよびコンテンツ応用

摘要

近年，ヘッドマウントディスプレイ（HMD)をはじめとする様々なVR機器の低価格化と高機能化が急速に進hでいる。現状で広視野かつ高解像度のHMDが一般に普及するまでは至っていないが，無線でルームスケールのVR体験が一般的に可能となっている。しかしながら，実空間の住宅環境において安全なルームスケールを確保することは困難であり，限られた実空間内でVR空間を移動するための手段については依然課題が残されている。一方で，VE環境において実環境で我々が感じる感覚とは異なる感覚刺激を与えるとVR酔いにつながることはよく知られている。例えば，イスに座りながらジョイパッドなどのコントローラを用いてVR環境内を歩行する場合，実環境で我々が立って歩いたときの感覚とは異なるため，酔いが生じやすくなる。また，広大なVR環境内を歩行する際，実環境においてVR環境と同様の空間を確保することは困難であるため，ユーザの位置や姿勢などをトラッキング可能な範囲の限られた実空間内においてVR酔いも含めて違和感なくVR空間内を無限に歩行可能な手法が必要となる。無限歩行を実現する方法として，稼働する床を足元に配置し，進行方向とは逆方向に床を移動させる方法がいくつか提案されている。しかしながら，この方法では装置自体が大掛かりとなり，コストがかかる問題がある。一方，低コストで実現する方法として，足を滑らせることで進行方向への足の移動をキャンセルする方法が提案されている。しかしながら，足が滑るため，実環境で歩いているような感覚とは大きく異なる。また，実際に実環境で歩行する際に，進行方向とは異なる映像を呈示することで進行方向を錯覚可能な手法がいくつか提案されているが,進行方向の自由度が制限される問題や，やや広い空間が必要になるといった問題がある。このほか，進行方向に体や上半身を傾かせて移動する方法が提案されているが，いずれも歩行感覚とは大きく異なる。また，その場で足踏みすることでバーチャル環境を歩行する方法では，進行方向への重心変化が生じないため歩行感覚に乏しい。このように，VE環境内を低コストかつ高没入に歩行感覚を呈示するまでは至っていないのが現状である。