液体合金における結晶核形成過程の分子動力学解析

摘要

金属ガラスは液体金属を急冷することで作製される．大きなバルク材の作製するためガラス形成能の高い（よりゆっくりとした冷却速度でも結晶化せずにアモルファス固体となる）合金開発が求められている．このことから液体合金が結晶化するプロセスとその支配因子の理解が重要となっている．従来，分子動力学（MD）法を用いて液体金属が結晶化するプロセスを原子論から詳細に調べた研究は多数ある．一方，通常のMD 解析では対象とする時間スケールが最大でもマイクロ秒オーダーと小さく，ガラス形成能の高い，すなわち結晶化が生じにくい合金ではMD解析の時間スケール内で液体合金から結晶核が生じるプロセスを観察することは困難である．この時間スケールの問題を克服することを目的として，近年ブーストポテンシャルを系に付与することで結晶核形成を促進させ，かつ結晶核形成の自由エネルギーを評価する新たなMD 解析手法が提案されている1)．本研究ではこの手法に基づき，まず結晶核を含まない液体合金から結晶核形成過程を促進させるMD解析を実施する．その上で通常のMD では結晶核形成を観察するのが困難な合金組成に対して，臨界核サイズよりも小さな結晶核を出現させその特徴について議論する．