反射型ファイバープローブシステムによる脳組織光学定数スぺクトル計測

摘要

近年，拡散反射分光法やオプティカルコヒーレンストモグラフィ(OCT)を用いてin vivoラット脳における内因性光信号(Intrinsic Optical Signals, IOSs)に基づき脳神経組織のバイアビリティ，脳神経活動や脳機能障害を評価する試みがなされている.脳組織における主要なIOSsは，血液量の増減による光吸収·散乱変化，血中へモグロビンの酸素化·脱酸素化による吸光変化，細胞外イオン濃度変化により生じる浸透圧に依存した細胞体積変化に起因する光散乱変化であり，in vivoで得られるIOSsにはこれらの全てが反映されると考えられる.IOSsは大脳皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression, CSD)等の脳組織の病態生理学的なプロセスを評価する上でも有効な手段となり得る.CSDは大脳皮質を2-4mm/minで伝搬する脱分極波であり.CSDの到達において，局所場電位(Local Field Potential, LFP)の陰性変化の直後に，一過性の血流上昇が観察される.CSDは片頭痛をはじめ様々な脳機能障害と関係していると考えられているが，その発生機序や生理学的および病理学的な意義は未だ不明な点が多い.IOSsの計測により脳組織そのものの変化と血行動態変化を同時に評価することが出来ればCSDのより詳細な検討が可能になると考えられる.これまでに我々は，2つの異なる入射-検出ファイバー配置を有する反射型単一ファイバープローブによる分光拡散反射率計測システムを構築し，光伝搬モンテカルロシミュレーションを利用した生体組織の等価散乱係数作μs(λ)と吸収係数μs(λ)の推定法を提案している.本研究では，開発したシステムの光入射-検出ファイバー径とファイバー間距離の違いが，脳組織光学定数計測に及ぼす影響について，ラットを用いた動物実験による検討を行った.