パワーコンバータに用いられるアルミニウム電解コンデンサの最新技術動向

摘要

アルミニウム電解コンデンサ（以下，Al 電解コンデンサと略す）は安価・大容量という特長を有し，小容量のスイッチング電源から低圧のインバータまで広く利用されている。他の種類のコンデンサに比べ低寿命で損失も大きいと指摘されることがあるが，近年の技術開発によりこれらの欠点は解消されつつある。例えば，105°C 10,000 時間保証品の実用化や，車載向けの135°C品の標準化が実現している。また，機能性高分子とのハイブリッド化により80V 以上定格電圧の製品が実現されており，電解コンデンサの電解液による温度特性が克服されている。このような温度特性の改善だけでなく，小型化，耐振動性の向上，長寿命化といった様々な要求に対応するため，Al 電解コンデンサの材料の高性能化と量産化技術に関する取り組みが続けられている。これらに加え，損失測定，加速劣化試験による寿命推定，熱等価回路を用いたコンデンサ内部温度のモデリング，コンディションモニタリングなど，パワーコンバータ内でAl 電解コンデンサを使用する際の実際の特性に関する研究例が多数報告されており，従来のノウハウや経験則に頼ることのない信頼性志向の設計が実現しつつある。