デュアルインバータを用いた負荷電力補償による電解コンデンサレスインバータのトルク脈動抑制法

摘要

近年，モータドライブシステムに用いられるインバータの長寿命化を目的とした研究が盛hに行われている。これら研究の多くは，PFC や電解コンデンサのレス化を狙うものであり，電力変換器の低コスト，長寿命，小型軽量化に有効である。論文のシステムは，直流リンクキャパシタに直列にスイッチング素子を追加する構成でパワーデカップリングを行い，負荷モータに供給する電力を一定とする。しかし，電圧利用率が0.5 以下に制限され，モータの運転範囲が縮小する問題がある。文献のシステムは，直流リンク部に小容量のキャパシタを設けた構成となっており，海外機種のルームエアコンのコンプレッサ用途に広く普及されている。このシステムでは，電源の単相交流電力を電力変換器で平滑しないで，負荷の内部磁石型永久磁石同期モータ(IPMSM)へ供給するため、q 軸電流を電源周波数の2倍の周波数で脈動させる必要がある。このため約200%のトルク脈動が発生し，モータ銅損と機械振動・騒音の増加が懸念される。また，直流リンク電圧が非平滑であることから，インバータの平均出力電圧が低下して，定格電流の増大によってもモータ銅損の増加に影響している。このように，電解コンデンサレスインバータは，電力変換器の低コスト，長寿命化，小型軽量化に有効である一方，モータにおいては，トルクリプル増加，機械振動・騒音増加，損失増加の課題がある。したがって，アプリケーションは，コンプレッサなど一部に限られる。著者らはこれまでに，電解コンデンサレスインバータにおいて単相交流電力を非平滑することによって起こるトルク脈動の抑制を目的に，デュアルインバータに着目した電解コンデンサレス単相－三相電力変換器の構成と制御法を提案している。本稿では，単相交流電力を脈動させつつ，補助インバータによって負荷モータに供給する電力を一定とする制御手法を提案する。オープンエンド巻線構造の負荷モータを用いた実機実験により，提案システムのトルク脈動抑制効果を検証したので報告する。