シェアリングサービスにおけるシステムリスク管理の視点: 移動手段型のシェアリングサービスに着目して

摘要

「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産（スキルのような無形のものも含む）の貸出しを仲介するサービスである。シェアリングの種類は大きくスペース、モノ、移動手段、スキル、お金のシェアリングの5 種類に分類できる。最近、特にクラウドを活用したIoT プラットフォームサービスとしての移動手段のシェアリングサービスは日本国内で急速に展開されている。例えば、IoT デバイスやスマートフォンアプリをクラウドと連携することで利用者にレンタルサービスを提供する自転車シェアリング、自動車シェアリングや傘のシェアリング等が挙げられる。このような移動手段型のシェアリングビジネスモデルにおいては、サービスの利用者に利便性をもたらす一方、シェアリングサービスプラットフォームを運営する事業者における情報システムのリスク管理はより複雑化している。従来のシステムリスク管理では、リスクが及ぶ範囲はサーバー側とローカル側のそれぞれにある特定のシステム及びそれらを結ぶ通信部分のみであり、リスクの範囲は限定されていた。しかし、IoT を活用した移動手段型のシェアリングサービスはIoT デバイスやモバイルアプリを介したネットサービスであるため、システムリスクは一企業内部に留まらず、企業外部まで拡散し、リスク管理は非常に困難となっている。