GRAPE : グラデーション画像によるプレイリスト単位の音楽の可視化

摘要

携帯型音楽プレイヤの登場や音楽配信技術の発展で，音楽と触れ合う手段が増え，音楽は主要なコンテンツに成長したといえる．しかし「音楽」というメディアは，実際に聞いてみるまで中身を把握できないため，内容把握に時間がかかる．音楽の内容を短時間で直感的に把握する一手段として，画像で情報の全体像を表現する「可視化」が非常に有用であるといえる．本報告では，「1画像で1プレイリスト」を表すプレイリスト単位の音楽の可視化，GRAPE (GRadation ArrangedPlaylist Environment)を提案する．我々は音楽鑑賞の際，1曲聞くごとに次に聞く曲を逐一選択する操作方法よりも，プレイリストやアルバムといった音楽のまとまりを選択する操作方法のほうが一般的だと考える．よって，プレイリストやアルバムの全体像を可視化することで，多くのユーザの選曲操作スタイルを変えることなく選曲操作を支援できると考える．GRAPEは音楽再生機器上での選曲を容易にする他に，次のような効果も考えられる．まず，プレイリストやCDの中身に関する傾向や差異を知りたい時に，本手法によってまとまったオーディオ情報を概観できる．また，プレイリストを単純に画像として扱い，視覚的に楽しむ，ユーザ間で共有する，といったことが容易になる．可視化結果である画像が様々な機器やソフトウェアで扱いやすいメディアであることから，この他にも様々な活用ができると期待できる．なお，本報告で言う「プレイリスト」とは，ユーザが作成したプレイリストや音楽プレイヤによって自動作成されたプレイリストだけでなく，各アルバムや各アーティストまたは音楽コレクション全体などといった音楽のまとまりを総称するものとする．本手法ではSOM (Self Organization Map)を適用することで，グラデーション風の画像を自動生成する．グラデーションには，リズム感?メリハリを持つという表現効果がある．また，人の心を動かす心理効果がある．単色に比べてグラデーションの物には「触りたい」，「欲しい」といった要求が大きく作用する．この心理効果はGUI のボタン，その他の各種製品にも広く利用されている．このような効果は，可視化や情報を専門とする人だけではなく，音楽を聴く全ての人を対象とする音楽プレイヤのデザインに有益と考えた．