歴史的建造物における耐力が不明な耐力壁に関する実験的研究:坐漁荘の耐力壁について

摘要

愛知県にある博物館明治村には、大正9年創建の近代和風建築である西園寺公望別邸「坐漁荘」が移築保存されている。 （以下、特に断りのない限り坐漁荘と略記する。）坐漁荘内には種々の構造要素と想定できる壁が残されている。これらは現行法の規定で耐力壁として評価できない仕様であるため、耐震改修を行う際に撤去され、現行法に合った壁に取り替えられる可能性が高い。しかし、坐漁荘の文化的、建築学的価値を考えると、既存の壁も含め、できるだけ現状を保存すべきであり、耐震改修工事にあたっては、既存壁がどの程度の耐力を有するかを評価し、それを踏まえて効果的な補強設計を行う必要がある。本研究では坐漁荘に見られる４タイプの壁について、依頼を受けて実大実験を行い、変形性能を確認し、実験から得た荷重‐変形角関係より要素基準剛性、壁倍率、壁基準耐力を算定し耐震性能を評価する。