プレストレスを利用したガラス構造の適用性に関する研究(その１)ガラスへのプレストレス導入による応力制御効果の把握

摘要

ガラスは、その化学組成から非常に高い圧縮強度を有する材料(表1)であり、その透明性が形成する新しい空間意匠性が注目され、最近では構造部材への適用も試みられている(図1)。特に強化ガラスは、熱処理により表面に圧縮応力層が形成され、ガラスの欠点である引張応力に対する抵抗性能が格段に向上するため、高い使用実績を有している(図2)。一方では引張応力層も内在するため、微小な傷の進展や不純物の膨張等がこの層で発生した場合、自然破壊が生じる危険性を内包している。近年では、この自然破壊が問題視され、国内では強化ガラスが回避される傾向にある。以上のことから、本論ではフロート板ガラスにテンション材を付加し、ガラスへプレストレス(以下｢PS｣)を導入することで応力制御が可能なハイブリッド構造を提案する。本構造は、強化ガラスの基本コンセプトを、構造システムレベルで獲得したものと捉えることもできる。本論では、提案構造に対して、実験と数値解析によりガラス構造体としての適用性に関して検討を行う。