アイリーン・グレイの住宅E.1027における模式図と動線図の関係（1）:住人の動きに関する考察

摘要

アイリーン・グレイ(Eileen Gray,1878-1976)は、初期の一連の漆塗り屏風や家具の制作によって装飾芸術家としてその名を確立した後、近代主義の建築家に移行したデザイナーとして知られる。1930年代までにル・コルビュジエやJ.J.P.アウトなど、ごく限られた建築家に評価されたが、近代建築の主要歴史書に彼女が取り上げられることはなかった。グレイの再評価は、1960年代後半から始まり、近年、評伝や作品集が出版され、また、大々的な展覧会が開催されて、その創作活動と作品に関心が集まっている。特に、住宅E.1027（図1）は、研究対象にあげられることが多い。しかし、E.1027のデザイン手法を示す４つの模式図（図2）と動線図（図3）の関係に言及した研究は見あたらない。本稿では、この模式図と動線図との関係、特には、住人の動きについて考察する。