聴取による話者識別における言語の影響:日本語母語話者が発話した日本語・英語の場合

摘要

聴取による話者識別において，言語情報がどのように影響を及ぼすのかという研究はこれまでにも行われてきた．例えばWinters ら[1]では，バイリンガル話者を識別する際，言語に依存しない情報（音声の個人性）と言語に依存する情報（言語情報）の両方を利用して，識別が可能になることが報告されている．さらにWester らでは，2 つの刺激音が同一言語の場合の話者識別では，聴取者は音声の個人性にのみ焦点を合わせることができるため，音声信号内の言語情報による影響を受けないことが示された。一方，刺激音の言語が異なる場合においては，聴取者は，慣れ親しhだ言語の音声については音声の個人性と言語情報の両方を利用できるものの，聴取者にとっての外国語の音声では個人性のみを利用することが報告されている．またMok ら[3]では，聴取者の言語の習熟度は話者識別における自信度と相関がみられること，話者識別の精度は刺激音の言語が同じである場合の方が，言語が異なる場合よりも高くなることが述べられている．どの先行研究においても，話者が母語を話す場合の識別精度は，非母語を話す場合の識別精度よりも高くなったと報告されている．