生体脳組織の弾性率を模倣した超軟シリコーン樹脂上での神経細胞培養

摘要

脳機能の基礎研究や新薬候補化合物のスクリーニングにおいて，培養細胞を用いた生体機能モデリングは重要な役割を担う．しかし，汎用的なガラス基板上で培養した神経ネットワークは，生体系と比べ，過剰に同期した発火パターンを示す．この原因の1つに，培養系ではシナプス強度が強くなってしまうことが挙げられる[1][2]．近年，細胞の力覚特性が調べられ，足場材料の硬さが神経細胞の軸索や樹状突起の成長に影響を与えることが報告された[3][4]．これは特に足場材料の弾性率が生体脳の値に近くなったときに大きな差が見られている[4]．軸索や樹状突起は神経細胞では入出力端子の役割を担うため，足場材料の硬さはシナプス強度や神経ネットワーク活動にも影響を及ぼし得ると考えられる．そこで我々は今回，脳の弾性率を模倣した超軟シリコーン上でラット大脳皮質神経細胞を培養する手法を確立し，patch clamp法およびCaイメージングにより神経活動を記録，解析したので，その結果を報告する．