テラヘルツ波誘起表面周期構造の高時間分解観測を目指した高強度テラヘルツ光源の開発

摘要

高強度の電磁波を金属や半導体に照射すると、表面に電磁波の回折限界以下の微細な周期的構造が形成される。これはLIPSSと呼ばれており、すでに国内外で数多くの報告がなされている。その一例として、チタンサファイアレーザー（λ=800 nm）をTiに照射すると、最初に格子間隔60 nmで電場の偏光に平行な周期構造が形成される。照射回数を増やしていくと、間隔600 nmで偏光に垂直な周期構造へと成長する。また、近年テラヘルツ波によるLIPSS形成も報告されており、大阪大学にあるTHz-FELを用いて発生させたテラヘルツ波（λ=82μm）をSiに照射することで、格子間隔4μmで偏光に平行な周期構造が形成されている。しかし、LIPSS形成のメカニズムは完全に明らかにはされておらず、仮説の提唱にとどまっているというのが現状である。仮説の検証のためには LIPSS 形成の時間発展を高時間分解で観測する必要があるが、レーザーによるLIPSS はフェムト秒のタイムスケールで形成されることと格子間隔が可視光の波長よりも短いことから、観測が困難であると考えられる。そこで我々は、テラヘルツ波がピコ秒のパルス幅を持つこと、格子間隔が可視光の波長よりも長いことに着目し、テラヘルツ波によるLIPSS形成の時間発展の観測を目指して、高強度テラヘルツ光源の開発および放射特性の評価を行った。