Laguna Venetaの地理的固有性がもたらす建築への空間論的影響について:Fondazione Querini Stampalia】とNegozio Olivettiの断面的研究を中心として

摘要

Carlo Scarpa(1906-1978)(以下C.Scarpaとする）は人生の大半をヴ工ネト地方で過ごし、常に建築に向かない気候や土地性、また歴史性と対峙し批判的地域主義的な立場で設計を行なっていたと言われている。特にヴエネチアでは"Acqua Alta (アクア•アルタ）"と呼ばれる氾濫現象によって一階部は居住できず車も入れない。こうした土地でC.Scarpaは建築をつくることに挑み続けた。本研究では彼が1975-76年にヴエネチア建築大学で行つた講義の録音•スライド画像から作成された講義録『alezione con Carlo Scarpa』(以下講義録と記す)(fig.1)を同研究室の木村一暁と全翻訳し貴重な言説を得た。その中でC.Scarpaは水を极うことについて「私は水が好きです。私はヴエネチア人で、私は水路を設計しています。それは太陽の下ではうまくいきます。」(講義録より）と述べている。この言説に出てくる"Venetian (ヴエネチア人）"という言葉はC.Scarpaが自身を表す際に使われる。一方で、具体的な水に関わる設計手法についての言説は数少ない。調査としてC.Scarpaの水を用いて空間を構成した作品13作品の水盤を網羅的に分析、分類した結果、特に[Negozio Olivetti] (1957-59) (fig2)と[Fondazione Querini Stampalia】 （1961-63) (fig3)の2作品において特徴的な設計を行なっている事が分かり、主要な研究対象とした。分析を通してC.Scarpaの水という自然への思想、水盤の設計意図、を明らかにし、C. Scarpaの作品を捉え直す事を目的とする。