津波被害が想定されている沿岸地域における事前復興計画策定に向けた住民意向に関する研究: 和歌山県由良町を対象として

摘要

我が国は世界有数の地震国であり、過去に幾度となく巨大地震や津波によって甚大な被害を受けてきた。さらに、近い将来、南海トラフ地震（M8～9）の発生が予測されており、文部科学省地震調査研究推進本部によると、今後30 年以内に70～80％の確率で発生し、最大津波高は30ｍを超え、太平洋沿岸地域を中心に広域にわたる甚大な津波被害をもたらすと予測されている。その対応のひとつとして「事前復興計画」への関心が高まりつつある。事前復興計画とは「地域住民等との協働で、地域の目指すべき将来像や復興の基本方針等を平時のうちにまとめたもの」であり、南海トラフ地震の発生が迫る今日、その重要性はより高まりつつあると考えられる。また我が国の沿岸地域では、人口減少・少子高齢化などの地域の持続性に問題を抱える地域が少なくなく 、発災前に高台への移転を検討することも重要と考えられる。それゆえ、実効性のある事前復興計画策定のために、地域特性や住民意向を細かく把握した上で検討を進めることが必要と考えられる。