高分子系張り床材の突き上げと床下地の放出水分量の関係 その3: 床材の熱膨張率と放出水分量の関係に関する実験結果および考察

摘要

本報(その3)では、前報(その2)で概要を述べた実験の結果および考察について述べる。図1に、経時変化測定用試験体で測定した、変色表値の経時変化を示す。図中、横軸は前報(その2)の図3と同様、コンクリート打ち込み後の経過時間であり、縦軸の変色表値は大きいほど放出水分量が多いことを表す。図より、気中養生では、打ち込み後1日の変色表値は非常に大きいが、10日程度までに急激に減少し、以降60日程度まで漸減した後、ほぼ一定の値に収束していることがわかる。一方、散水養生では、打ち込み後1～7日での変色表値は非常に小さいが、時間の経過とともに増加し、14日程度の時点で気中養生と同程度となった後、気中養生よりやや早く漸減し、最終的に気中養生と同程度の値に収束している。ここで、打ち込み後1～7日の時点では、水分計指示値、すなわち含有水分量は散水養生の方が多い(前報(その2)図3参照)にもかかわらず、放出水分量は非常に少ない理由として、散水養生により表層部が緻密になったため水分の放出が抑制されたことや、水和反応が活発なため表層部の水分の多くが水和に消費され、放出される水分の割合が少なかったことなどが考えられる。また、その後放出水分量が増加した理由として、水和反応が緩慢になるにしたがって水和に消費される水分の量が減少し、放出される水分の割合が増加したことなどが考えられる。ただし、以上はあくまでも推論であり、水分の挙動のメカニズムに関する詳細な検討は今後の課題とする。