青森県黒石市中心部における「こみせ」の建築形式と使われ方からみた変遷と継承された特性

摘要

1975 年の重要伝統的建造物群保存地区（以下、重伝建）制度の導入をはじめとして近年伝統的または地域固有の建築の修景や、活用を通して保存することが重要視されている。しかし現状の制度では建築の形式的価値の保存はされているものの、その背後にある人の使い方や意識なども含めた保存と環境の持続を行うには課題が多い。また、伝統的かつ地域の暮らしや気候と建築形式の関係がしばしば指摘される。その中でも雁木は降雪時でも人が雪にあたらず街中を移動できる特徴をもつ建築としてあげられる。また、雁木と似た形式をもつ建築として、平成17 年7 月に重伝建に指定された黒石市中町では、「こみせ」1)（写真１）と呼ばれる雨や雪から人を守るものが通りに並hでいる。一方、隣接する前町と横町には木造ではないものの「こみせ」の形に類似した工作物が随所に見られる。しかしこれらの中には、歩行空間が失われ、別の使われ方をしているものもあり、形の上では「こみせ」が維持されていても、別の用途として使われているものと考えられる。そこで本研究では、「こみせ」を建築形式と使われ方の二点から捉え、それらの内容と関係性の変遷を検討することで、住民と建築形式に継承された「こみせ」の特性を明らかにすることを目的とする。