いけのうえのスタンド

摘要

都市部において土地の細分化が引き起こす問題のひとつに、狭小地化による住環境問題が挙げられる。狭小地の出現によって、間口が狭く、１階に駐車場と玄関、水廻り、２階にLDK、３階に寝室という、ポピュラーな狭小住宅形態がつくられ、現在ではこれを基準に都市部住宅地が形成されているといえる。こうした住宅地の１階であるグランドレベルでは、狭小地ゆえに十分な外部空間がとれないことに加え、生活空間が２階以上につくられた結果、昼夜問わず人の気配が感じられない乏しい生活景を生み出すに至った。さらに、防火や防犯といった建築そのものの高性能化によって都市部の住宅は一層閉ざされる方向にあり、希薄化する都市部のコミュニティ問題を助長させることにもつながる。本来生活のなかから生まれる活動が街から見えたり、街にこそ溢れ出したりすることで、生活景そのものが住宅地の魅力に結びつくはずであり、これこそが都市部住宅地に求められる。本計画は、都市部住宅地のグランドレベルに着目し、竣工後の住まい手自らの活動を含めて、都市部の住宅のあり方を見直すことを目的とする。