原子力施設の新しいASR 対策の考え方の提案 その6 統括と今後課題

摘要

本事業では，JNES レポートに示された骨材のASR 試験方法及びコンクリート構造物のASR 診断方法を検証すると共に，改善方法を検討するために海外の試験方法（RILEM の規格試験等）を実施した。得られた知見に基づき，国内外の最新知見を反映した骨材のASR 試験方法及びコンクリート構造物のASR 診断方法の改善案を提案した。さらに今後は，ASR 診断を含め，ASR に関する総合的な構造物の評価が重要であり，構造物を構成する部材のASR とひび割れ発生によるコンクリート強度・弾性率低下などが影響する構造性能，及び遮断性能低下の観点から，原子力施設全体の安全性への影響評価が必要である。このためには大型の暴露試験による小型試験体での実験結果の検証，その挙動を再現する数値シミュレーション等の活用，および実構造物でのモニタリングが望まれる。合わせて，さらなるASR による膨張の発生機構の原理解明，骨材の特性に適合するCPT の加速条件の最適化，客観性あるASR 診断・将来予測手法の開発，さらに信頼できる診断が実行できる技能者確保が必要である。