深層学習を用いたスマート林業機械の開発: 架線集材の自動化に向けた挑戦

摘要

戦後に拡大した日本国内における人工林が本格的な利用期を迎えており，その有効活用や国産材の競争力強化の重要性はますます高まっている．国は効率的な林業施業を実現するための施策としてAI やIoT 技術を活用したスマート林業の実現に向けた事業を進めており，林野庁による「スマート林業構築実践事業推進事業のうち森林作業システム高度化対策の伐採・搬出作業用林業機械の開発・改良事業」を受託したイワフジ工業（株）は、筆者らと共同でAI 技術を応用した架線集材の自動化システムの開発を進めている．急峻な斜面の多い国内の林業の現場においてワイヤーロープを用いて伐倒木を林道まで搬送する架線集材が普及しているが，従来はワイヤーを木に掛ける「荷掛け」や搬送後ワイヤーを外す「荷下し」を人が行っていたため多くの作業員を要し作業効率が低い上に危険も伴う作業を行わなければならない課題があった．本講演では，イワフジ工業（株）が林野庁の事業を受託して開発している無線操作によって集材木を掴む・放すことが可能な回生充電式ラジコンロージンググラップルとラジコン集材機にエッジ用GPGPU コンピュータNVIDIAJetson TX2 とカメラを組み込み，深層学習技術を用いた画像のセマンティックセグメンテーション処理によって検出された伐倒木位置を手がかりに自動集材するシステムを紹介し，開発における課題について議論する．