LoRa フラッディング技術を活用した臨時展開可能なバルーンネットワークの研究

摘要

災害発生直後からの72 時間は，被災地の状況把握や，救助活動を円滑に行うために特に重要な期間であり，この期間の情報通信網はたとえ低速であっても繋がるということが重要なファクターである．そのため，72 時間連続稼働可能な臨時の通信システムの確保が喫緊課題である．また，これまでの災害を通した知見として，公衆網は大災害時に現地への投入までの時間や展開後の通信輻輳の問題が有り，特に中山間地においては公衆網に期待できない． そこで，低速であっても広範囲をカバーしうる72 時間連続稼働可能な自営のネットワークシステムが必要とされており，その課題解決のためにLoRa などのLPWA システムを高所に設置して通信網を構築することが望ましい．しかし，災害発生直後などの緊急時においては都合 よく利用可能な構造物にネットワークシステムを設置展開できるとは限らないため，現状解決可能な技術が存在しない．そこで，これまでNICT が研究開発を進めてきたLoRa フラッディング技術を実装した軽量かつ省電力な無線通信ノードが持つ長距離通信性能を最大限活用するため，ヘリウムガスバルーンによる上空ネットワークを構築し，その隘路を克服することを提案する．加えて，LoRa 規格の通信の低速さによる，活用可能なアプリケーションが限定されるという問題点に対して，複数のLoRa チャネル結束による通信高速化を合わせて提案し，その活用領域を広げることを目指す．