移動制約者の社会活躍を担保する道路デザインに向けた課題: 生活道路における視覚障害者の歩行誘導の視点から

摘要

都市における社会活動の多くの場面において安全で円滑な移動が保障されることは，きわめて基本的で重要な視点である．昨今議論が盛hなダイバーシティ推進に関する取り組みの中では，多方面において高齢者や障害者をはじめとした移動制約者が社会で活躍するための社会環境をつくることが求められている．そのような中，障害者権利条約（国連）への批准や障害者差別解消法の施行，バリアフリー法と関連省令・ガイドラインの改正といった国の動きをはじめとした各種制度や基準の策定が進み，全国各地において旅客施設，車両，道路等，様々な移動円滑化のための整備が進められている．また，東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控える中，高齢者，障害者，外国人等を含めたユニバーサルデザインの理念に基づいた移動環境は，日常生活のみならず観光のような非日常的な視点からも着実に進展していると評価できるであろう．一方で，生活道路での歩行，管理主体の異なる施設間の不連続性，同一の障害属性の中での多様性への対応等，解決すべき課題も多く見受けられる．本稿では，整備に関して様々な制約の強い生活道路における視覚障害者の歩行を取り上げ，交通安全施設等の路面表示のユニバーサルな活用方法について言及し，道路デザインにおけるダイバーシティの課題を考察する．