EANET フィルターパック法におけるNH4NO3 粒子のアーティファクト補正法の開発

摘要

近年、東アジア地域の急速な経済発展に起因する窒素化合物やアンモニア等の反応性窒素の過剰な放出が問題となっている。大気中へ放出された反応性窒素が、地表面へ過剰に負荷されることによる生態系への影響が懸念されており、大気から地表面への沈着量を正確に把握する必要がある。東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)では、抵抗モデルに基づく乾性沈着推定法(Inferential 法)によって乾性沈着量の評価が行われている。大気成分濃度は、フィルターパック法(FP 法)で測定されており、粒子として捕集された半揮発性粒子がサンプリング中に揮発し、後段のガス捕集フィルターに捕集されてしまうアーティファクトの問題を抱えている。沈着速度は成分毎に異なるため、このアーティファクトは、乾性沈着量推定の不確実性を高める一要因となっている。本研究では、NH_4NO_3 粒子が高濃度となる冬季を対象として、熱力学平衡モデル(ISORROPIAII :Fountoukis and Nenes, 2007)を用いたアーティファクト補正法を検討した。