低レイノルズ数流れにおける流線形回転体の抗力特性

摘要

流線形回転体の抗力係数C_D はレイノルズ数Re>1×10~6の高レイノルズ数においては大型の旅客飛行船や成層圏プラットフォームとしての無人飛行船の開発のために研究されてきた。この領域では層流境界層から乱流境界層に遷移する摩擦抗力が作用し、飛行船の性能に大きく影響することから多数の研究結果がある。流線形回転体のC_D は長さlと直径dとの比(l/d)によって表されることから、Hoernerは全長lをパラメータとしたRe>1×10~4の結果をまとめている。ただし、Re<1×10~5は摩擦抗力に圧力抗力を加えて予想される理論C_d が示されているが実験結果はない。一方、球よりは流線形物体の方がC_Dは小さく、機械工学便覧にもRe>2×10~4（直径をパラメータにしたレイノルズ数）の流線形物体のC_D が球のC_Dと共に一部のレイノルズ数において記載されている。そのC_D はレイノルズ数が減少すると増加する傾向にあるが、レイノルズ数がさらに減少するとどのように変化するかはその実験結果は見当たらない。一方、近年超小型航空機（MAV）が開発されるようになり、そのレイノルズ数は小さくなり、また、低レイノルズ数航空機として火星探査無人飛行機も提案されるようになってきた。また、昆虫においても、高速で飛行するトンボのような昆虫は体の長さと直径の比(l/d)は大きいが、より速度の小さい飛翔昆虫は小さい。これはレイノルズ数が減少すると流線型が意味を持たないことを示しているが、流線形回転体のレイノルズ数が減少していくと、どこで球と同程度になるかというのは興味ある課題である。