急速昇温が平板固体酸化物形燃料電池の発電性能に及ぼす影響

摘要

近年地球環境保護の観点から，化石燃料消費と二酸化炭素排出量が問題となっている．航空業界では2016年の国際民間航空機関(ICAO)が公表した報告書によると航空機産業のさらなる成長が見込まれている．同報告では2020年以降は二酸化炭素排出量を増加させないこと，2050年までに燃料効率を年2%改善するという目標を掲げている．技術的な対策として，新技術の導入，運航方式の改善，代替燃料の活用が目標達成には必要とされている．このような背景から航空機の電動化が検討され始めている．JAXAでは分散配置したファンと複合発電を利用した電動航空機が考案されている．ファンを多数分散配置することで，総ファン面積を増加させることが可能となり，推進効率の向上が期待できる．複合発電では出力密度と熱効率改善の観点から，ガスタービンと燃料電池のハイブリッド発電機構が検討されている．図1に検討されている機体の構成例を示す．利用が検討されている燃料電池は，電解質膜にイットリア安定化ジルコニア(YSZ: Yttria Stabilized Zirconia)を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC: Solid Oxide FuelCell)である．SOFCは燃料電池の中で最も発電効率が高く，作動温度が高温であるため， SOFCの発電に寄与しない余剰燃料と排熱をガスタービンで利用できるメリットがあり，定置型発電において実証試験の報告がある発電方法である．排熱を利用した炭化水素燃料の改質を行えば，大きな補機である一酸化炭素を除去するためのシフトリアクタを使用しなくても炭化水素燃料の利用が可能である．