全球大気モデル及び航空機性能モデルを用いた航空機の排気成分が大気に及ぼす影響に関する数値解析

摘要

航空機の排気中には, 主な成分として, 二酸化炭素(CO_2), 水蒸気, 窒素酸化物(NOx), 硫黄酸化物(SOx), すすが含まれる. 航空機はこれらのエミッションを, 上部対流圏および下部成層圏に直接排出することにより, 大気の化学的組成を変え, 地球の放射バランスを変えることで気候に影響を与える. 気候変動の指標として, 放射強制力がしばしば用いられるが, これは平衡状態にある地球のエネルギーバランスが, 何らかの要因により変化した時の放射エネルギー収支の変動として定義される. 航空輸送分野の放射強制力は, 全人為起源の放射強制力のうち,約5%の寄与をしていると見積もられている. 航空輸送は, 1972年から2007年まで年率6.2%成長を遂げ,急速に成長している交通セクターであり, FAAの予測では, 今後20年間に渡り, 民間航空輸送量は年率平均2.3%で増加すると試算されている. このような背景から航空機エミッションの大気および気候に及ぼす影響を評価することは重要である.