CRM形状• NWB形状模型による着水試験及び着水解析

摘要

航空機が制御された状態で着水することはDitchingと呼ばれ，耐空性を証明されている洋上飛 行を行う旅客機はすべてDitching要件"を満たして 安全を保証されている.要件とは，制御された非常 着水(Ditching)時の衝撃力により搭乗者に傷害を与え ることなく，搭乗者が脱出できる間浮遊しているこ とであり，通常，実機試験は経済的•試験安全上非 現実的であるため，Ditching証明はスケールモデル による着水試験を行い，その結果を基に実機の場合 を想定し，証明を行っている.Ditching証明試験で は，航空機のスケーノレモデノレにより，スケーノレ則に 則った速度で飛行させ，Ditching時の飛行条件を満 足する形で着水試験が行われる.ただし，同型形状 の胴体を持つ機体を新規開発した場合には，過去の 試験から評価を行えれば良いとされ，類似形状の機 体のスケールモデル試験データを用いた相似性解析 により証明される.そのため，一度Ditching試験を 実施し認定された製造会社は，類似形状の航空機を 製作する場合には，類似解析で証明し，Ditching試 験は実施されない.例えばアメリカでは1976年に Lockheed社がL-1011のためにスケールモデル試験 を行って以降は，旅客機開発に際しDitching証明試 験は行われていない.我が国では，YS-11の開発の 際には，非常着水時の運航マニュアルの作成のため の着水試験は実施されたようであるが，スケールモ デル試験により着水時荷重評価を行ってはいない模 様で有る.また，着水現象に関しては，米国では， 戦前から飛行艇に関する研究が盛hに行われており， さらに各種機体形状によるDitching特性の豊富なデ ータの蓄積も有り，スケールモデル試験からの実 機の特性評価を可能にし，製造メーカは独自の算定 手法を確立しているようである.一方，欧州では航 空機の安全性を高めるために解析技術により着水時 の荷重データベースを作成する研究が実施されている.つまり，欧米では，相似形状から相似解析に よる証明を得るに十分な試験データや実績が有る. しかし，残念ながら，我が国では，これまで相似解 析による証明を実施した実績は無く，将来的に航空 機開発を我が国が引き続き行っていくには，類似形状の場合は類似解析技術，形状が違えばDitching試験や解析が必要で有る.試験については，実際は耐 空性証明を取得する航空機製造会社が実施するしか ないが，必要となる解析技術の手法は，我が国の共 通基盤技術として獲得しておくことは重要である.