金管楽器吹鳴時の管体形状が唇の自励振動に与える影響

摘要

金管楽器を吹奏する際,演奏者は抵抗感を知覚するが,この抵抗感と物理的なパラメータの関係性は明らかになっていない.本研究では,音響インピーダンスが抵抗感に与える影響に着目し,有限要素シミュレーションを用いて駆動点における粒子入力に対する音圧応答の評価を行なった.管体のプロファイルが異なるモデルを3つ作成し,それぞれのモデルの入力端から粒子速度を入力した際に発生する音響インピーダンスの周波数特性を求めた.また,音響インピーダンスを逆フーリエ変換することによって得られた反射関数と,唇からの入力パルスに見立てたインパルス列を畳み込むことによってパルス列に対する応答音圧を求めた.さらに,定常状態に達してからの入力パルスがピーク値をとるタイミングの応答音圧の値を評価値として用いて,管体プロファイル形状の差異が吹鳴時の入力端の音圧に与える影響について考察を行った.その結果,音響インピーダンスにおいてはピーク列が内径に応じて変化することが観測された.また,インパルス列に対する応答においては内径を大きく変化させたModel 3において,1 kHz以上の周波数でピークが低くなっていた.これは1kHzの周波数では自励振動が起こりにくくなることを示唆するものである.また,管体の形状に応じてこれらの応答特性が変化することで,唇からパルスが出力される瞬間の抵抗が変化し,自励振動の変化や演奏者への抵抗感に繋がる可能性が示唆される.