液体の軟X線吸収分光法のバイオ研究への展望

摘要

X線吸収分光法(XAS)は，X線の透過吸収を観測する手法である。X線照射により原子のK殻やL殻の内殻電子が非占有軌道や連続状態などに励起する過程に対応するため，元素選択的な電子状態の分析が可能である。特に，2keV以下の軟X線領域には，Li,B，C，N，Oなどの軽元素のK殻や，Mn，Fe，Coなどの遷移金属のL殻が存在するため，軽元素を中心に構成される液体の構造解析に重要な光領域である。しかしながら，軟X線は大気や水に強く吸収されるため，液体層の厚さを1μm以下にしなければ，液体の測定は不可能であった。そのため，赤外吸収分光，可視紫外吸収分光，硬X線領域のXASなどの，他のエネルギー領域の分子分光法と比較して，その進展は非常に遅れていた。