技術史研究の立場からの電力系統技術の将来展望:調査研究フレームワークと主要論点

摘要

〈1•1〉電力系統の転換期電力系統技術を巡る内外の趨勢は、21世紀に入り世界的にもその様相は一変しつつあり、今やその大きな転換期を迎えている。規模の経済を追求してきた大規模集中型に限界が見えてきた一方で、化石燃料制約、地球温暖化防止という大きな課題の解消に資する再生可能エネルギーを中心とした分散型電源の技術開発が進展し、導入普及が期待されている状況にある。さらに地震や異常気象の頻発等で電力系統は打撃を受けており、こうした天災の備えとしても期待は高まる方向である。加えて、デジタル化の進展と電気事業の自由化の流れはその転換を促進する方向であり、地産地消型の小規模分散型でデジタル技術を活用した「スマートなシステム」に向けた取り組みが活発化しつつある。化石燃料制約、地球温暖化防止双方に資すると重視されてきた原子力発電の先行きが不透明であるなかこうした取り組みは重要といえる。