むだ時間のある多変数モデル予測制御系の構成

摘要

化学工業におけるプラントでは，むだ時間が存在する場合が多く，むだ時間プロセスの制御が求められている。特に，モデル予測制御はむだ時間プロセスに有効であると言われていて,むだ時間系に対するモデル予測制御に関する研究が活発に行われている。しかし，文献の中には，伝達関数の分子多項式のz~(-1)の始めの係数をむだ時間分，零とおいて，むだ時間を無視してよいと述べている例がある。この場合，(A)むだ時間を考慮して，分子多項式の第1項の係数b_0≠0とした場合，(B)上述のむだ時間を無視した場合を比較すると，（1)むだ時間が既知であり，（2)むだ時間分の先の目標値が予測可能であると仮定したとき，(A)では，むだ時間だけ先に制御入力を目標値の変化に対応させて遅れなく有効な制御が可能であるのに対して，(B)では，値がゼロである係数も制御則構成上で用いているので，零とした係数分だけ，目標値追従が遅れる。このことは後に示す例題でのシミュレーシヨンでも確認される。このようにむだ時間を正確に把握して制御則を構成することが必要である。