河川の衛生学的安全性へ及ぼす雨天時下水の影響

摘要

下水処理場放流水は、放流先水域での微生物負荷源の一つとして疑われている。例えば、晴天時において下水処理場放流水と放流先河川水中の大腸菌、大腸菌群および大腸菌ファージを調査した先行研究では、下水処理場の下流域において大腸菌ファージの濃度が上昇することが確認されている。しかしながら、強い降雨により発生する可能性のある、生物反応槽?最終沈殿池をバイパスして塩素処理だけ行う「簡易処理放流」や最初沈殿池?生物反応槽ぉよび最終沈殿池をバイパスする「予備処理放流」が放流先水域に及ぼす微生物負荷についてはこれまでほとhど調査されていない。さらに、大腸菌や大腸菌群に代表される細菌とウィルスでは塩素消毒耐性が異なるため、細菌とウィルスで雨天時の下水処理場放流水からの負荷量は異なる可能性が考えられるが、この点もこれまで明らかになっていない。特に中流域にある都市の大部分は合流式下水道を採用しているため、雨天時の微生物の実態調査は特に重要である。