汚染廃棄物処分施設コンクリートのアル力リ骨材反応抑制の意義

摘要

東京電力福島第一原子力発電所事故による種々の放射能汚染した廃棄物を減容化し、高濃度になった濃縮物を鉄筋コンクリート製の遮断型相当の処分施設に最終処分することが考えらえる。廃掃法に定める遮断型処分場は、コンクリートの耐久性を明示的に考慮していないが、一般の鉄筋コンクリート構造物には寿命がある。コンクリートが劣化する機構は種々あるが、一度劣化を始めると対策が困難な現象として、アルカリ骨材反応(AAR)によるひび割れがある。一般構造物ではAARの抑制対策がJISでも定められている。しかし、このAAR対策が不十分であることが学術団体の研究会でも指摘されている。しかも、処分施設は使用期限を定めない構造物であり、一般構造物には有効でも、時間的概念がない抑制対策では不十分である。日本における原子力発電所由来の放射性廃棄物処分施設に用いるコンクリートには、AARを引き起こす本質的成分であるシリカがほとhど含まれない石灰石を用いることでこの問題を回避している。オフサイトの放射能汚染した廃棄物処分施設を考えると、石灰石が入手できるとは限らず、別のAAAR抑制対策が必要となる。国立環境研究所では、指定廃棄物の遮断型相当の処分場施設に用いるコンクリートについて技術資料をまとめている。本稿では、AARの課題と対策について、最新の知見をもとに解説する。