底質コアを用いた摩周湖環境の歴史的推移の解明

摘要

摩周湖は北海道東部に位置する火口型カルデラ湖であり世界有数の透明度を誇る.この摩周湖で透明度の低下が問題になっている.摩周湖は1931年に世界一の透明度41.6mが報告されたが近年は15?25m程に低下し，2016年9月3日には過去最低の6.8mを記録した.透明度低下の要因は様々だが，周囲のカルデラ壁の崩落による土砂供給量の増加や，植物プランクトンの増加，あるいは，本来魚が存在しなかった摩周湖にふ化事業として魚の放流を行ったことにより，湖内の生態系が影響を受け植物プランクトン相が変化したことが一因であるとの説もある.また，大気からの栄養塩負荷量が増加した可能性も疑われる.そこで，本研究では底質コアの分析を行うことにより，摩周湖内の環境の歴史的推移を解明することを目的とした.植物プランクトンの変化に関しては，ケイ酸質の殻に覆われ底質中に微化石として残存する珪藻から，大気汚染起源の栄養塩負荷増大の可能性については無機微小粒子から検討することとした.