土石流シミュレーションによる山口県内の複合災害発生ポテンシャルの検討

摘要

地理情報システムを用いた解析の結果，山口県に指定されている土石流警戒区域と河川網が重複する地点は，全体の56%，鉄道網が重複する地点は全体の4%，河川網および鉄道網と重複する地点は全体の2%存在することが明らかとなり，同じ土石流警戒区域に指定されている区域の中でも，複合災害発生の可能性の高い箇所が多数存在することが明らかとなった．また，山口県内の路線別に複合災害発生の高い地点を示すことができた．また，岩国駅から徳山駅間の山陽本線，岩徳線，錦川清流線における複合災害が発生する可能性が高い箇所の土石流シミュレーションの結果，土石流が鉄道にも河川にも到達しなかった地点，土石流が鉄道にのみ流入した地点，土石流が河川のみに流入した地点，土石流が鉄道と河川に流入した地点，土石流が河川と鉄道の交差している箇所に流入した地点に分類し，複合災害発生の危険性のリスクを詳細に評価することで，どの地域でどのような複合災害の発生する可能性が高いかをポテンシャルマップとして示すことができた．また，各地点における土砂堆積厚の観点から，複合災害の発生する可能性が高い地点を評価し，特に岩徳線の欽明路駅付近で，土石流による大量の土砂流入を防止するための対策が必要であることが示された．以上より，複合災害の発生する可能性の高い土石流警戒区域を評価する上で，土石流シミュレーションが有用であることが示唆された．