溶接金属部ミクロ組織の入熱条件依存性からみたX線応力測定法の適用性評価

摘要

本報告では，粗大粒の生じやすいオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属部でのX線応力測定法の適用性に関して，溶接金属ミクロ組織の入熱条件依存性に着目して検討を行った.以下に得られた主な結論を示す. (1) 複数の入熱条件で溶接した試験片に対しX線応力測定法を用いて残留応力測定を行った結果，溶接金属部において大入熱の条件で測定が困難となる傾向が確認できた.また，そのきはX線の照射範囲の増加あるいは2D法の利用により軽減された. (2) 2θ-sin~2_ψ線図の測定点数に注目し，測定可否を入熱条件で整理した結果，適用限界は入熱条件の関数で表すことができ，その限界曲線はX線照射範囲の拡大で大入熱側へと移動することを示した. (3) 溶接金属部ミクロ組織の入熱条件依存性に注目して適用限界に関する指標を導出し，v~∝q~2の関係で表されることを確認した.また，実測値との比較ではコリメータ径の変化に対して良い対応を示した.ただし平面揺動の適用では結晶粒の成長特性に起因したズレが見られたため，高精度化に向けては更なる検討が必要である.