植物工場生産レタスにおけるチップバーンの自動識別

摘要

近年，園芸分野において植物工場技術が注目されている。植物工場は，高度に環境を管理した閉鎖空間内において，植物を安定的に生産する技術である。日本の人工光型植物工場では，成長が早い葉菜類が栽培されるケースが多く、特にレタス類は主要作物となっている。葉菜類を生産する植物工場の課題のひとつに，チップバーンがある。チップバーンとは，植物の生長点細胞が壊死する現象であり，チップバーンによつて壊死した細胞は黒く変色する。チップバーンの発生原因として，生育が旺盛となった植物の生長点にカルシウムの供給が追い付かず，植物体内での相対的なカルシゥム欠乏が発症し，結果，細胞が壊死することが報告されている。また，植物の成長速度が加速され、その成長量がある適正範囲を超えたときに植物体内の乳管が破裂し，結果，細胞が破壊され，チップバーンを発生させることも報告されている。植物工場では，植物に適した環境を創出することで植物の成長を促進させることができるが，この環境によってチップバーンは誘発される。チップバーンが発生した場合，その痕跡は黒く残り続けるため，外観上の欠損となり，商品価値が損なわれる。この欠損は消費者からのクレーム対象となるため，生産者側としては，出荷物の中に，チップバーン発症作物が極力含まれないようにする必要がある。しかしながら，植物工場では，採算性を上げる ために，作物の成長を早める方向で管理がされているため，チップバーンの発生を完全に止めることは困難である。現状，各植物工場では，これらのチップバーンを人間の目視で全数検査をして出荷前に取り除いているが，この作業に多大なる労力とコストが発生する。レタス類はチップバーンが発生しやすい作物であることから，チップバーンが発症したレタスを，機械学習によって，自動的に識別し取り除くことができれば，商業的なメリットは大きい。