ε-Fe_2O_3微粒子の水素還元による相変化と磁気特性

摘要

逆ミセル法おょびゾル-ゲル法によりSiO_2被覆ε-Fe_2O_3粉末を作製し，さらに水素還元したときの相変化および磁気特性の変化を調査した。SiO_2被覆Fe(OH)_3ナノ粒子を1100 °Cで24 h熱処理したとき，既報値を超える保磁力H_(cJ)=1735 kA-m~(-1)が得られた。このとき，得られたSiO_2被覆 ε-Fe_2O_3の平均粒径は33 nmであり,XRDパターンからSiO_2とε-Fe_2O_3相からなる粉末であった。この粉末に対し，異なる温度で60 min水素還元を行った結果，300 °C以上で ε-Fe_2O_3相は消失し，300 °CではFe_3O_4相，400 °C以上では Fe_3O_4相およびα-Fe相からなる粉末が得られた。水素還元時間を短くした場合，500 °Cでは，還元時間15 minまでに ε-Fe_2O_3相がFe_3O_4またはα-Feまで還元され，ε-Fe_2O_3とα-Feまたはε-Fe_2O_3とFe_3O_4から成る複相粉末は得られなかった。一方，300 °CでSiO_2被覆ε-Fe_2O_3粉末を水素還元したとき， ε-Fe_2O_3相およびFe_3O_4相から成る2相組織が得られた。しかしながら,ε-Fe_2O_3相の高保磁力は維持されず，大きく減少した。したがって，H_2気流中でのSiO_2被覆ε-Fe_2O_3の水素還元では，いずれの条件においてもε-Fe_2O_3とα-Feとの二相は共存せず，低温で還元するとε-Fe_2O_3相とFe_3O_4相とは共存できることがわかった。