FIR型非整数階微分VCのタツピング実験と解析解との比較

摘要

バーチャルリアリティ（VR)に用いられる多くのカ覚提示装置は，質量の小さい可動部を持ち，位置や速度を計測して力を提示するインピーダンス提示が用いられている。インピーダンス提示を用いたカ覚提示システムでは，長いサンプリング間隔では仮想物体表面の剛性を低く設定せざるを得ない場合がある。一般的に，仮想物体表面に仮想的なばねとダンパによるインピーダンス(VC:バーチャル力ップリング)を使用するが，本研究ではVCの仮想ダンバに代わり非整数階微分項を使用した場合の効果について考察する。今まで，非整数階微分をFIR型近似した場合の受動性の解析を行うとともに，単独及び複数の非整数階微分項を持つVCの設計手法を提案し，カ覚提示する際の安定に提示できる仮想ばね係数を増加させることができることを示してきた(1)(2)。一方，人が物体の硬さを知覚する場合，物体の剛性だけでなく，質量や粘性からも影響を受けることが報告されてきている(3)。そのため，非整数階微分項を用いてばね係数を高く設定できたとしても，人は硬いと感じない可能性もある。そこで既存研究では,FIR型近似した非整数階微分VCを用いた場合のタツビング実験を行い，非整数階微分項と硬さ知覚の関係を評価してきた(4)。この中で，ばね係数を増加させる目的に対してはあまり効果の見られなかった近似項数が多く，低い微分階数の非整数階微分項が，タッピング実験では硬く感じる結果を得た。近似項数が多い非整数階微分項は連続値系に近いとも考えることができるため，本研究では，非整数階微分項を含む微分方程式の解析解を求め，その挙動と実験結果の比較を行う。特に，ばね•ダンバ系では減袞係数が大きいほど硬いと感じられろことが報告されているため(6),波形の減衰に着目した評価を行う。