水およびキセノンを推進剤とした超小型イオンスラスタの研究開発現状と展望

摘要

現在，小型衛星の実利用が急速に拡大するなか，多くの小型衛星（10 – 100 kg）が推進機の搭載をはじめている．その中でも比推力およびトータルインパルスの大きな小型イオンスラスタの搭載は，1 km/s 級の軌道遷移には必須の推進機となる．この中で，東京大学は，2014 年に初となる小型イオン推進システム，MIPS（Miniature Ion Propulsion System），の軌道上実証を果たした[1-3]．MIPS は200 – 350 μN 級の小型イオンスラスタを搭載し，推進系全システムが8.1 kg の推進システムである．さらにこれと並行し，キセノンを共用することでコールドガススラスタをMIPS に付加したシステムが，I-COUPS（Ion thruster and Coldgasthruster Unified Propulsion System）として開発された[4]．I-COUPS は，超小型新宇宙探査機PROCYON[5]に搭載され2014 年12 月より，深宇宙における223時間のイオンスラスタ作動および１年間に渡るコールドガススラスタ姿勢制御（RCS 機能）を達成した[6,7]．