力覚提示のためのマルチレート·オンラインリメッシュ型有限要素変形シミュレーション

摘要

大規模な仮想柔軟物体の変形シミュレーションは計算コストが膨大となるため，実時間での計算は困難となる.特に，力覚インタラクションにおいては，反力の提示に高い更新レートが求められるため，効率的なアルゴリズムが求められる.そのため，これまで多くの高速化手法が提案されており[1]，筆者らは図1に示すように，適応的四面体メッシュを用いたマルチレート·オンラインリメッシュ法を提案している[2].しかし，陰解法に対応しておらず安定性に問題があり，また，マルチレート法において時間刻みの異なる領域間で応力伝播の不整合性が生じるという問題があった.そこで本研究では，以上の問題を改善するため，陰解法として有限要素法を採用し，1)リメッシュに伴い疎行列の更新が発生するオンラインリメッシュ法，および各ステップで解くべき連立方程式の規模が変化するマルチレート法を低コストで処理するための拡張ELL形式を提案する.また，2)適応的四面体メッシュの階層構造を利用したマルチレート法のための応力伝播近似手法を提案する.さらに，筆者らの従来手法との比較実験より，応力伝播の不整合性に起因する変位誤差の改善を確認した.また，提案手法を適用したマルチレート·オンラインリメッシュ法が有限要素変形シミュレーションの高速化に寄与することを示した.