スライディングモード原理を考慮した冷温システムに対する非線形温度制御

摘要

ペルチェ素子とは熱電変換素子の1つであり，電流を流 すと片方が吸熱，もう片方が放熱する，ペルチェ効果を利 用した半導体素子である.ペルチェ素子の特徴として，小 型で軽量であること，振動·騒音·摩擦がないこと，フロン などの冷媒が不要といったことが挙げられる.本研究では このペルチェ素子の冷却の際に発生する放熱を利用した冷温システムを用いる.冷温システムとは2つの空間を持ち， ペルチェ素子の冷却効果で片方の空間を低温に保ち，放熱 効果でもう片方の空間を高温に保つシステムである.この 冷温システムの温度制御を行うにあたり,ペルチェ素子が 有するジュール熱などの非線形要素により，線形制御則の みでは制御が困難であるという問題が存在する.そこで本 研究ではオペレータ理論を用いる.オペレータ理論は非線 形制御の1つであり，制御系設計の際に制御対象のモデル の線形近似を行うことなく実際のシステムのまま取り扱う ことができ，非線形システムの安定解析が容易に行えるな どの特徴を持つ.先行研究ではさらにスライディングモー ド制御の機能を取り入れたオペレータ理論による制御系設 計を行った.スライディングモード制御は，線形および非線 形な系に対応し，所望の特性を持つ切換面を設計すること で，システムを所望の特性に収束させることができる，と いった特徴を持つ.スライディングモード制御は可変構造 制御系理論と呼ばれており，位相平面上を動く非線形制御 対象の状態軌跡をその状態により位相平面を切り換えるこ とにより，設計した切換面に状態を固定，その切換面上で 状態を制御するといった制御方法である.状態を特定の面 に固定することで，実際のシステムより1つ次元を落とし て扱うことができるので，制御が大幅に容易になるという利点が挙げられる.