脳波に基づいた情報処理

摘要

快適な生活環境を制御するシステム(environment control system for having comfortable daily lives:ECSCDL)の需要が高まり，注目されはじめている。ECSCDLでは従来のECSの機能に加えて，ユーザの心身状態を計算機が把握し，温度?湿度?光?音?香りなどを自動で制御する機能が整備されている。ECSは，ユーザが意識的に意図した結果を，特殊なインタフェースを介して，ユーザが確認?把握することで，ユーザの取り巻く環境(家電製品)を制御するものである。つまり，ユーザの意図や意思を入力するためのインタフェースが必要となる。一般的には，ユーザの状態に適応したインタフェースが選択されることになるが，その選択は容易であるとは言い難い。最近では，人間の生理?心理状態に適合した機器制御，環境制御，コミュニケーションツールなどを構築するために，心の変化を定量的に評価し，その結果を使用?利用することで，ユーザの心理状態を把握しサービスに適用するための研究が行われはじめている。これらでは，その評価方法として心理テストを用いるものから生体信号を利用するものなどが挙げられる。心理テストは多くの質問を有しており，被験者の精神的負担は少なくない。そのため，タスク実行時の生体信号を計測?解析することで，心理テストを使用することなく，人間の心理状態を把握する研究が行なわれている。中でも，脳波を応用した研究は盛hに行なわれている.脳波を用いる場合，個人特性の著しさが問題とされている。個人特性を緩和させるための手法は様々提案されているが，個人特性が生じる原因?要因の言及はほとhど行なわれていない。個人特性が生じる要因の一つとして，ユーザ間の心理特性の違いが関与していると考えられる。とくに，外部刺激に対する心の変化を脳波で把握するタスクではその可能性は高いと推測される。一方，脳波インタフェース(Brain Computer Interface:BCI)の研究?開発が，脳科学の進展に伴って着目されている。国内の関連研究では，脳活動計測法を利用して感性を評価する研究や人間の意思決定をセンシングするBCI(電動車いすの制御)の研究?開発が盛hに行なわれている。著者らは，BCIの技術を応用したECSCDLの構築を最終目標としている。また，容易に装着可能な簡易脳波計測装置に着目し，ユーザの意図?意思を計測し，音楽刺激を制御する新たなインタフェースの開発を試みている。